Monthly Guideでは、毎月注目のプログラムを紹介。
編集チームがピックアップした各プログラムの魅力を、インタビューや取材レポートなど多彩な内容でお届けします。

目次
6月号

©OFS/Monika Rittershaus 2019年4月ザルツブルク・イースター音楽祭公演より
本公演は、ザルツブルク・イースター音楽祭とザクセン州立歌劇場、新国立劇場、東京文化会館の国際共同制作で、ザルツブルクとドレスデンで上演した後、東京での上演は2020年に予定されていましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で中止となり、この度、待望の上演となります。



2021年8月、オリンピック・パラリンピックの文化オリンピアード公認プログラムとして『ニュルンベルクのマイスタージンガー』が、東京文化会館にて上演されます。
また、今秋には、新国立劇場においても上演が予定されており、ますます注目が高まっています。そこで、世界的に人気の高い超大作の見所を、制作担当の東京文化会館 事業企画課・佐藤さやかさんに伺いました。

東京文化会館 事業企画課
佐藤さやかさん

ワーグナー作品では希少な喜劇を
今まさに円熟期を迎えた
大野和士と東京都交響楽団の共演で。


この『ニュルンベルクのマイスタージンガー』の見所は、あげればキリがないのですが、まず東京での上演は16年ぶりとなります。もう、それだけでも観る価値がありますよね。しかも海外のトップレベルの歌手たちが来日し、日本の実力派の歌手も勢揃いします。そして、オーケストラは東京文化会館をホームグラウンドとする都響(東京都交響楽団)で、指揮は世界的なマエストロ・大野和士です。この共演は、まさに円熟期を迎えており、「今」しか出せない響きを創り出すことでしょう。また、ワーグナー唯一の喜劇ともいわれている演目でもあり、コミカルで理解しやすいところも魅力です。

総合プロデュース/指揮
大野和士

©Ludwig Olah
演出
イェンス=ダニエル・ヘルツォーク

「芸術と民は共に育ち、咲き誇らん」
という名台詞が今の時代、特に響くのでは……。


オペラというと王族や貴族の話が多いイメージがありますが、この演目の主役は市井の人。そして「芸術と民は共に育ち、咲き誇らん」という名台詞もあり、町の人々が芸術を守り、高めようとしていきます。芸術を守るというテーマは、時代や社会状況を超えて現代にも通じるものですし、コロナ禍にある今、より強く深く響くのではないでしょうか。演出の手法も時代設定を移す、いわゆる“読み替え”が使われていますが、奇をてらうこともなく、かといって古臭いわけでもなく、現代を生きる私たちの感覚にとてもフィットする内容になっています。

©OFS/Monika Rittershaus 2019年4月ザルツブルク・イースター音楽祭公演より

“鑑賞”というよりも“体感”!
それこそがオペラ観劇の醍醐味。


たとえばオペラをまだ観たことがない方も、ぜひ一度ライブ鑑賞で、劇場の空気感を体験していただきたいです。観劇の際いつも思うのですが、いい公演というのは出演者が熱のこもった演奏をするだけでなく、それを受け止める聴衆の思いが出演者に伝わるもの。そして、そこから生まれる緊張や集中が相乗効果となり、なんと言いますか「すごいものに遭遇している」という実感になるのです。その場にいるからこそ共有できる一体感は、ライブでしか味わえません。ぜひその特別な感覚を劇場で確かめてください。

(H)

『ニュルンベルクのマイスタージンガー』出演(ダーヴィット役)/声楽家(テノール):望月哲也さん

©FUKAYA Yoshinobu/auraY2

歌手として、なぜ歌うのか?
もちろん自分の欲求から歌うこともありますが、1番の理由は、「私の声で、美しい言葉やメロディをたくさんの方に聴いていただきたい」からです。
人の心を癒すことが出来たら、どんなに幸せなことか。コロナ禍ではありますが、いつかきっとまた音楽を普通に聴ける日々がやってくると思うので、頑張りましょう。

『ニュルンベルクのマイスタージンガー』制作:佐藤さやかさん

人と人との交わりが難しい状況が続きますが、ライブでしか味わえないアートの醍醐味が忘れられないように、伝えていきたいです。そして、舞台と客席の想いが融合、共鳴、呼応して起こる相乗効果、時間芸術の無限の高まりを体感していただきたいです。

オペラ夏の祭典2019-20 Japan⇔Tokyo⇔World
『ニュルンベルクのマイスタージンガー』

公式サイト

“虚にして虚にあらず。実にして実にあらず”という近松門左衛門の言葉がある。アルゼンチン・ブエノスアイレス出身の演劇・映像作家、マルコ・カナーレ氏による演劇プロジェクト『光の速さ-The Speed of Light-』を鑑賞して、その言葉を想起した。一般公募から選ばれた13人の役者の方々はみなさんアマチュア。そしてシニアと呼ばれる方々。当初の開演時期の2020年夏に向けて、2019年秋から稽古がスタートとしたということなので、2年近くの準備期間があったとのこと。
観劇体験は、まず都内の公園での受付からはじまる。受付を済ますと、鉢植えを囲みながら、出演者が『浜辺の歌』を謡って挨拶。その後、観客は3つのグループに分けられると出演者とともに鉢植えを持参し、ゆっくり近くの第2会場に向かう。3ヶ所ある第2会場のひとつで太子堂八幡神社の境内にある御神木の近くに置かれた仮設ベンチに座り、出演者の体験や思い出が書かれたメモ書きを渡される。戦後復興時の生活風景や家族との時間のこと。自身の幼少期や東京の街のこと。読み上げると、関連した昭和の歌謡がうたわれる。出演者の本当の思い出なのかどうか、すでに観客はわからなくなる。多くの共通した体験を持っているからなのか、誰かの思い出と“私”の記憶の区別がなくなっていく不思議な体験だ。
その後、持参した鉢植えも置かれた同神社境内の特設ステージに移り、メインのストーリーがはじまる。ある能楽堂の存続か取壊しかでもめる一家の歴史を軸に、出演者たちそれぞれの人生や今回の演劇に応募した想い、演出家であるカナーレ氏の父親との複雑な関係などがパラレルに展開していく。ここでもまた、どこまでが本当の話で、どこからが創作なのか。その境界があいまいなまま、次々と場面転換していくステージに引き込まれていくのだ。

Tokyo Tokyo FESTIVAL スペシャル13
『光の速さ -The Speed of Light-』演劇公演
作・演出:マルコ・カナーレ

最初のステージ、西太子堂公園。
©️松本和幸

ステージ2。出演者の思い出を観客が読み上げる。
©️松本和幸

最初のステージ、西太子堂公園。
©️松本和幸

ステージ2。出演者の思い出を観客が読み上げる。
©️松本和幸

ステージ2。観客は3つのグループに分かれて参加。
©️松本和幸

世界各地で上演される、
その土地とコミュニティの記憶の物語


今回のような演劇プロジェクトをカナーレ氏は、ブエノスアイレスのFIBAと呼ばれる演劇フェスティバルをはじめ、ドイツでも上演。その土地が持つ歴史や文化をテーマとして、ドキュメンタリーとフィクションを織り交ぜながら、各地のコミュニティと作り上げている。

この公演のために造られた屋外ステージのある境内では、上演中も参拝の方々が通り過ぎていく。また木々のさざめきや野鳥のさえずりも効果音のように加わる。劇場とはまた一味違った屋外ステージならではの興がある。
さて、冒頭の近松の言葉には続きがあって、“この間に慰みがあったものなり”(『虚実皮膜論』)とのこと。虚と実の間にこそ、慰みがあると言った。『光の速さ』では、能楽堂に想いをはせる老女は、魂の彷徨の旅に出かける。父の最期を見守りたい演出家は、舞台から去って故郷へ向かう。2021年の東京の街で繰り広げられた虚と実の世界は、放縦な“間”をつくり、観客たちを魅了しているように映った。

(O)

ステージ3の上演風景。
©️松本和幸

ステージ3の上演風景。
©️松本和幸

ステージ3の上演風景。
©️松本和幸

ステージ3の上演風景。
©️松本和幸

出演者による感動のフィナーレ。
©️松本和幸

Tokyo Tokyo FESTIVALスペシャル13
「光の速さ-The Speed of Light-」

公式サイト

Photo by Hiroshi Makino

Tokyo Tokyo FESTIVALスペシャル13
「DANCE TRUCK TOKYO」


■開催日:6月12日(土)、13日(日)
■会場:東大島 旧中川・川の駅

ここがおすすめ!

トラックの荷台がステージになって
街中で繰り広げられる光と音を放ちながら
のパフォーマンス。想像しただけでわく
わくします。でもきっとその光景は想像を
超えてしまうはず……。(H)

イサム・ノグチ 発見の道

■会期:4月24日(土)~8月29日(日)
■会場:東京都美術館
※日時指定予約制

ここがおすすめ!

「彫刻の宇宙」「かろみ(軽み)の世界」
「石の庭」の3章から構成されたノグチ芸術
の集大成は見逃せません!6月から始まった、
サカナクション・山口一郎氏のスペシャル
コンテンツも要チェックですね。(H)

Tokyo Tokyo FESTIVALスペシャル13
「TOKYO SENTO Festival 2020」


■会期:5月26日(水)~9月5日(日)
■会場:都内約500カ所の銭湯

ここがおすすめ!

日本を代表するアーティストによる
銭湯アートは必見!あの「テルマエ・
ロマエ」のヤマザキマリ氏も参加。
会期中のみ味わえる貴重な銭湯体験を
お見逃しなく。(K)

新・晴れた日 篠山紀信

■会期:8月15日(日)まで
■会場:東京都写真美術館 3階展示室(第1部)、
2階展示室(第2部)
※オンラインによる日時指定予約(推奨)

ここがおすすめ!

一時代を創ってきた篠山紀信氏の、
60年間にわたる写真家としての活動を堪能
することができる初の大規模回顧展。
全116点の展示に加え、会場限定のスペシャ
ルインタビュー映像も!(K)

※2021年6月11日時点の情報です。最新の情報は各プログラムの公式サイト等でご確認ください。

編集ライターチーム紹介

OKAJIMA
映画とテクノロジーが好き。自転車で東京中を移動。走行中にフッと感じる生活風景が好きですね。夕ご飯の匂いとか。

KATO
映画などエンタメ全般、伝統工芸、ものづくりの現場が好き。直感を大切にと思う今日この頃。猫も好きで目が合うと寄ってきます。

HIGASHI
現代美術と映画、音楽が好き。最近、伝統芸能も気になってます。おいしいものとスポーツ観戦にも目がありません。